かかりつけ医制度について考える
2024.05.31
院長 小室元
厚生労働省のホームページでは、日本医師会のホームページの文言を引用して、かかりつけ医の定義は、「健康に関することをなんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」とされています。
ところで、かかりつけ医の制度は国によって異なります。中には、登録の必要な国もあるのです。
アメリカはかかりつけ医の登録がなく、保険ごとに契約医がいます。
英国は登録制では、登録診療所のみ受診が可能です。
フランスは日本と同じ公的皆保険で、登録制のかかりつけ医は3割負担です。かかりつけ医を通さずに専門医療を受診した場合(婦人科、小児科、眼科、歯科を除く)は、7割負担です。
ドイツはかかりつけ医をつけることに法的義務はないのですが、約90%の国民がかかりつけ医をもっています。
日本のかかりつけ医に登録制度はありません。
英国のかかりつけ医登録制である「NHS (National Health Service 国民保健サービス)」の内容を、現地の日本人にヒアリングしました。
NHSのサービスを受けるためには、まず住まいの近くのGP Surgery (General Practitioner Surgery 一般開業医)に連絡を取り、診療予約を取ったうえで、GPの診療を受けます。
2020年のコロナウイルスのパンデミック後は、基本的にGP SurgeryのWebサイト上のフォームに必要事項を入力し、症状についての質問に答え、そのうえでGPとの直接診療が必要であることを記入します。その後、数日中にGP Surgeryより連絡があり、GPの予約をします。自分が診てほしい医師を指名することも可能です。また、NHSのアプリからもGPの予約ができます。
GPとの直接問診で、専門医に診てもらう必要があると判断された場合は、GPが患者をその地区内の病院内の専門医師に紹介し、詳しい診察や検査などを調整します。ただ、専門医との直接問診、検査などには数週間から数カ月かかることもあるそうです。そのため、雇用主等を通じて、Private Insurance(プライベート医療サービスを受けられる民間保険)がある患者は、その旨をGPに伝えて、そのプライベート医療サービスに紹介してもらうのです。そうすると、比較的早く受診できます。
また、ケガをしたときや緊急を要するときは、その地区のNHSの病院内にある、A&E (Accident Emergency)に行き、医師の診察を受けることができます。
NHSのアプリでは、ワクチンの接種記録の閲覧や証明書のダウンロード、処方箋の取得が可能です。また、どの薬局で処方を受け取るかも、アプリから指定できます。自分の過去の処方箋の記録やアレルギー反応なども、見ることが可能です。
NHSの良い点は、基本的に無料で医療を受診できることですが、短所は、時間がかかり検査が十分でないことです。
日本(登録なし)と英国のかかりつけ医制度(登録制)を比べてみると、登録制にしてしまうと、迅速で十分な医療を受けにくいのではないでしょうか。
今後の日本の医療を考えたときに、医療DXを推進して、医療情報を相互にやり取りできるシステムを構築し、患者自身が自分の情報に一部アクセスできるようにすることが優先されるように思います。