高齢者の四大骨折について
2024.07.04
院長 小室元
厚生労働省の令和4年 国民生活基礎調査によると、「骨折・転倒」は、介護が必要となった主な原因の第3位に位置しています。
高齢者の4大骨折の部位は、「肩」「背骨・腰」「手首」「太ももの付け根」です。
<肩>上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)
「上腕骨近位部」とは、肩の付け根部分のことです。
転倒したときに手や肘をついたり、肩を打ち付けたりすると起こりやすい骨折です。
<背骨・腰>脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)
「脊椎」とは、背骨のことです。
尻もちをついたときに起こりやすい骨折ですが、骨粗鬆症が進行すると、くしゃみをしただけで骨折することがあります。
<手首>橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)
「橈骨」とは、肘から手首にかけてある2本の骨のうちの親指側の骨です。
「橈骨遠位端」は、手首の部分を指します。
転倒して手をついたときに起こりやすい骨折です。
<太ももの付け根>大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)
「大腿骨近位部」とは、太ももの付け根部分のことです。
具体的には、太ももの付け根の外側にある骨が出っ張った部分「大腿骨転子部(てんしぶ)」と、その内側の「大腿骨頸部(けいぶ)」の骨折があげられます。
尻もちをついたときや、つまずいて転倒したときに起こりやすい骨折です。
では、高齢者が骨折しやすいのは何故でしょう?
高齢になると、加齢とともに筋力が衰え、徐々に歩行能力がおちて、立位が不安定になって転倒しやすくなります。これを医学用語で「フレイル(虚弱)」といいます。また、眠剤や多数の服薬で転倒しやすくなっている方もいます。足が上がらなくなっているため、自宅や路上でつまずきやすいです。
さらに、高齢者は骨粗鬆症の進行で骨がもろくなっているため、転倒による骨折をおこしやすいのです。
ところで、高齢者の四大骨折の中で、生活の質を最も低下させてしまうのが、「大腿骨近位部骨折」です。
太ももの付け根を骨折すると、体を自由に動かせなくなり、筋肉や体の機能がさらに衰えて、寝たきりになってしまうことも少なくありません。寝たきりになると認知機能も低下します。
手術に耐えられる体力のある患者様に対しては、今後の生活のために、通常は手術が行われます。
術後は、歩行能力の改善や関節の動きを元に戻すためにリハビリが必要です。
高齢者の骨折を予防するためには、①骨粗鬆症の予防・治療、②日々の運動、③安全な生活のための環境調整が欠かせません。当院では、「骨密度検査と骨粗鬆症の治療」「骨粗鬆症の予防のための栄養指導」「転倒予防のための運動指導」などを行っています。また、安全な生活を送っていただくために、介護保険を用いた手すりの設置や杖や歩行器といった歩行補助具の利用などの環境調整もしています。
健康で長生きするために、高齢者の骨折予防は重要です。食事、運動などの生活習慣や、住環境の安全性を見直してみましょう。
気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。