認知症の治療

認知症の治療について

写真:認知症イメージ

当院では、患者様からのアクセスの良さを活用して、認知症の早期診断に努めています。日常生活の様子についての情報収集と検査で、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」と「レビー小体型認知症」のおおよその鑑別が可能です。

認知症の治療では、「薬物療法」「環境調整」「リハビリ」を組み合わせます。患者様には定期的な受診を勧め、ご家族やケアマネジャーとも連携しながら、生活で困っていることに対する助言や薬物治療を通してこまめに対応していきます。

日本認知症学会 専門医が治療を担当します。

ご家族の方へ

「物忘れのため」と言うと、患者様本人が抵抗されることもあるため、「物覚えが悪くなっていたら調べましょう」や「健康診断のために一度病院に行こう」など、別の理由で受診を促してみてください。

認知症とは

認知症は、一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいいます。

認知症は記憶障害(いわゆる「物忘れ」)で発症することが多いです。その一方で、物忘れは高齢者で見られる自然な老化現象の一つでもあります。

認知症の物忘れは「物忘れをしているという自覚が乏しい」「出来事そのものを忘れている」「数か月から数年で進行する」などの特徴があります。

認知症の症状

認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。

中核症状

中核症状は脳の神経細胞の障害のために直接生じる認知機能障害です。

  • 記憶障害
  • 見当識障害(今がいつで、ここがどこか、今自分の置かれている状況がわからなくなる)
  • 実行機能障害(物事を計画し、効率的に実行することができなくなる)
  • 理解・判断力の低下
  • 失語(言葉の表出や理解ができなくなる) など

周辺症状

周辺症状は、中核症状に患者様の本来の性格や身体要因・環境要因が重なって生じる二次的な行動・心理症状です。周辺症状は目立つことも、目立たないこともあります。

  • 妄想
  • 幻覚
  • 易怒性(怒りやすくなる)
  • 不安
  • 抑うつ など

認知症の種類

日本では、アルツハイマー型認知症が最も多く、認知症全体の60%を占め、これに血管性認知症20%、レビー小体型認知症5%が続きます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、記憶障害で発症し、次いで見当識障害や実行機能障害が加わります。

記憶障害のために日常生活に様々な影響が出ているにも関わらず上手に周囲に合わせて応答をする「取り繕い反応」や、探し物が出てこない時に盗まれたと思い込む「物盗られ妄想」など特徴的な症状が見られます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、認知機能障害に調子の良い時と悪い時との変動があることが特徴で、初期には記憶障害が目立たないこともあります。

「人がいる」「壁に虫がたくさんいる」などの具体的な幻視、「夢を見て大きな声を出す、手足をばたつかせる」などの睡眠中の異常行動(レム睡眠行動障害)、パーキンソン症状を伴います。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害のために生じます。

脳血管障害のために生じた脳機能低下を反映するため、認知症は急に発症することがあり、認知症の症状はまだらに現れます。

感情失禁(突然泣き出したり笑い出したりする)、抑うつ、尿便失禁を伴うことが多いです。また、呂律困難、歩行困難、片麻痺などの認知機能障害以外の神経症状を伴うことも多いです。

認知症の検査

診察では、まず、簡易な認知機能検査(ミニメンタルステート検査や長谷川式認知症スケール)と日常生活の様子についての情報収集をします。そして、患者様に近時記憶障害や見当識障害が出現しているのか、出現している場合は、それが認知症と言えるレベルなのかを評価します。

続いて、神経学的診察をして、パーキンソン症状やその他の神経学的異常所見の有無を調べます。

検査では、頭部MRI検査と、甲状腺機能低下症など認知機能低下をもたらす内科疾患を除外する目的で血液検査をおこないます。

これらの情報と検査結果で、アルツハイマー型認知症、血管性認知症とレビー小体型認知症のおおよその鑑別は可能です。

認知症の治療

当院では、「薬物療法」「環境調整」「リハビリ」を組み合わせて治療します。

薬物療法

認知症の薬物治療は、認知症の進行抑制を目的とした抗認知症薬と、認知症の周辺症状の軽減を目的とした薬に分けられます。

抗認知症薬

アルツハイマー型認知症に対しては、4剤(アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ、メマリー)、レビー小体型認知症に対しては1剤(アリセプト)の抗認知症薬があります。

アルツハイマー型認知症では、認知症の症状と病期を考慮して患者様に最適な抗認知症薬を選択しています。

※アルツハイマー型認知症の新薬について

近年、アルツハイマー型認知症では、その治療薬として、脳内に蓄積したアミロイドβを除去する作用を持つ新規治療薬(レケンビ、ケサンラ)が開発されました。

初期のアルツハイマー型認知症とアルツハイマー型認知症の前段階(軽度認知障害)の患者様が、これらの新薬の適応となります。適応を判定するためには、さらに詳しい検査や入院が必要なため、当院から専門医療機関へ紹介させていただきます。

周辺症状の軽減と目的とした薬

周辺症状に対しては、症状とその程度にあわせて、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏などの漢方薬、レキサルティ、クエチアピン、リスペリドンなどの非定型精神病薬を必要に応じて投与します。

環境調整

患者様が介護認定を受けられそうであれば、主治医意見書を記載して、出来るだけ早期に介護保険の申請を勧めます。区分変更手続きの場合も同様です。その後、当院地域連携室を通じて、ケアマネジャーに早期の介入を依頼します。

生活でお困りのことがあれば、ご家族やケアマネジャーからの相談にも応じ、治療を進めていきます。

リハビリ

認知症に何らかの運動症状を合併しているようであれば、理学療法や作業療法は有益です。

また、構音障害、嚥下障害や失語があれば、言語療法は有益です。

リハビリによる運動や他者との交流で、認知機能低下の進行はある程度抑制されます。